大阪地方裁判所 昭和38年(わ)1582号 判決 1965年1月22日
事務所所在地
大阪市城東区今津町九二七番地
(登記簿上の本店 布施市新喜多一七九番地の一)
宮下鋼線株式会社
右代表者
宮下増平
右の者に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官中村信仁出席の上、審理を終り、次のとおり判決する。
主文
被告会社宮下鋼線株式会社を
判示第一の罪につき罰金一五〇万円に、
判示第二の罪につき罰金一五〇万円に、
判示第三の罪につき罰金二二〇万円に処する。
訴訟費用は全部被告会社の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社は大阪市城東区今津町九二七番地に事務所を置き、伸線業等を営むものであるが、被告会社の代表取締役であつた宮下平吉は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一、被告会社の昭和三四年五月一日より同三五年四月三〇日までの事業年度における所得金額は二、二五二万五、一三一円、これに対する法人税額は八四五万九、五三〇円であるのに拘らず、売上収入の一部を公表帳簿より除外する等の不正経理をなし、所得金額中一、四七三万五、〇四三円を秘匿したうえ、同三五年六月三〇日、布施税務署において、同署長宛に、右事業年度の所得金額は七七九万八八円、これに対する法人税額は二八六万二〇〇円である旨過少に記載した法人税額確定申告書を提出し、もつて不正行為により右事業年度の法人税五五九万九、三三〇円を免れ、
第二、被告会社の昭和三五年五月一日より同三六年四月三〇日までの事業年度における所得金額は一、四五九万四、六一一円、これに対する法人税額は五四四万五、九四〇円であるのに拘らず、売上収入の一部を公表帳簿より除外し、架空の仕入を計上する等の不正経理をなし、所得金額中一、三一六万七九四円を秘匿したうえ、同三六年六月三〇日、前記税務署において、同署長宛に、右事業年度の所得金額は一八〇万二、二一七円、これに対する法人税額は五九万四、七二〇円である旨過少に記載した法人税額確定申告書を提出し、もつて不正行為により右事業年度の法人税四八五万一、二二〇円を免れ、
第三、被告会社の昭和三六年五月一日より同三七年四月三〇日までの事業年度における所得金額は二、〇七二万三四五円、これに対する法人税額は七七七万三、七一〇円であるのに拘らず、前同様の不正経理をなし、所得金額中一、九七一万九、四五四円を秘匿したうえ、同三七年六月三〇日、前記税務署において、同署長宛に、右事業年度の所得金額は一〇〇万八九一円、これに対する法人税額は三三万二六〇円である旨過少に記載した法人税額確定申告書を提出し、もつて不正行為により、右事業年度の法人税七四四万三、四五〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一、登記官吏伊勢泰一作成の被告会社登記簿謄本。
一、宮下平吉の当公判廷における供述(但し否認部分を除く)
一、宮下平吉の検察官に対する供述調書三通。
一、大蔵事務官作成の宮下平吉に対する質問てん末書八通。
一、宮下平吉作成の上申書三通。
一、宮下平吉作成の大蔵事務官宛書簡二通。
一、証人朴甲生、同岡本元旦、同寺西悦治、同古川巌の当公判廷における各供述。
一、当裁判所の証人林田貞春、同宮村勉に対する各尋問調書。
一、岡本元旦、宮下増平、宮下博明の検察官に対する各供述調書(各二通)。
一、東茂和、中前照夫の検察官に対する各供述調書。
一、大蔵事務官作成の岡本元旦、宮下増平、宮下博明に対する各質問てん末書(各二通)。
一、大蔵事務官作成の東茂造、中谷政男、東茂和、中前照夫、鶴岡春吉、辻野延太郎、松裏要に対する各質問てん末書。
一、大蔵事務官岩崎久次作成の証明書三通。
一、谷野稔作成の大蔵事務官の書簡。
一、金森直一、平井正明(二通)、安田秀嗣、広沢一夫、中前照夫、桑山弘一、辻野延太郎、東海銀行上六支店、中道誠夫、三菱銀行今里支店、藪内幸一郎、田中久喜、渡辺洋三郎(二通)、谷野稔、今井田善蔵、東条与志央(二通)、辻野延太郎、川崎茂、大串逸朗、梅原沙予子、岡本鉄雄、奥田忠雄作成の各確認書。
一、松裏要、中道誠夫、竹内春雄作成の各供述書。
一、大蔵事務官作成の調査書一九通。
一、株式会社三和銀行放出支店長黒沢文夫作成の証明書二通。
一、押収にかかる買掛金帳一冊(証第一号)、仕入原材料台帳一冊(証第二号)、総勘定元帳一冊(証第三号)、手形受払帳一冊(証第四号)、経費明細帳一冊(証第五号)、物品出納帳一冊(証第六号)、総勘定元帳(証第七号)、経費明細帳一冊(証第八号)、物品出納帳一冊(証第九号)、銀行勘定帳一冊(証第一〇号)、物品出納帳一冊(証第一一号)、手帳一冊(証第一二号)、金銭領収書綴一綴(証第一三号)、仕入帳三冊(証第一四号、第一五号、第一六号)、棚卸明細一冊(証第一七号)、手形帳一冊(証第一八号)、売上帳一冊(証第一九号)、不動産関係領収書七枚(証第二〇号)、支払済請求書綴一二綴(証第二一号)、売掛帳二冊(証第二二号、第二三号)、買掛帳一冊(証第二四号)、買掛金帳一冊(証第二五号)、納品書綴(二月分)一冊(証第二六号)、納品書綴(三月分)一冊(証第二七号)、納品書綴(四月分)一冊(証第二八号)。
(検察官及び弁護人の主張に対する判断)
本件公訴事実中、第一の朴甲生関係の売上除外三件合計五九万円、第二の朴甲生関係の売上除外三件合計五九万四、二〇〇円についてはその売上除外の点につきこれを認めるに足る証拠はなく、かえつて証人朴甲生の当公判廷における供述によれば、右は売上除外ではなくいずれも相手方の依頼により約束手形を割引いたものであることが認められるから、右金額は売上除外として計上すべきではない。
次に弁護人は本件公訴事実中第一の那須野ガーネツト工業株式会社関係の売上除外一九一万五、三七三円は、売上除外ではなく、相手方の依頼により約束手形を割引したものであると主張するけれども、前記各証拠によれば判示のごとく認定するのが相当であり、右認定に反する被告会社代理人宮下平吉の供述は前記各証拠に照して、たやすく措信することができず、他に右認定をくつがえすに足る証拠はない。したがつて主張は採用しない。
(法令の適用)
判示各所為につき、 法人税法第四八条第一項、第五一条第一項。
判示第一、第二の各罪につき更に、昭和三七年三月三一日法律第四五号附則第一一項、同法による改正前の法人税法第五二条。
訴訟費用の負担につき、 刑事訴訟法第一八一条第一項本文。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 栄枝清一郎)